一人

金曜の夜、遅くに母の待つ家へ。
玄関を開けると、線香の香りに包まれる。
和室に作られた祭壇はそのままで、母はほとんどの時間をその部屋で、過ごしているという。

まだ、父の話をすると涙ぐむ母。
私はなるだけ泣かないようにする。

不思議と家に父の気配はない。
(私には…だけど)
父は、今頃大好きな東北の春を楽しんでいるのではないか。

一人−というのは寂しいものか。
若い時の一人 と 年老いての一人 とはまた違うのだろう。

私は、一人が好きかもしれない。
それでも、世の中に私のことを考えてくれる人が一人もいないというのは、寂しいなぁ。
今はどうなんだろう? いないかもしれない。